Panel five - curated by NAGASAWA Natsuho

Lunon『白昼夢』 長澤夏穂によるキュレーターコメント L.Berezenko 『いつか、どこかで、なんとなく』 長澤夏穂によるキュレーターコメント

Lunon『白昼夢』 長澤夏穂によるキュレーターコメント

白昼夢。この単語を聞いてどんな風景を想像するか。
この単語には現実で起きているかのような空想や想像を映像としてみる非現実的な体験をするという意味がある。つまり夢を見ているかのようなふわふわとした気持ちの状態を表す単語であると言える。
この作品には人を惹きつける二つの何かがあると思う。
一つは色彩関連。もう一つは一羽の蝶。
色彩の違和感を感じた人もいるのではないか。
普段見ている景色と、この作品の中での景色は各モチーフの持つ色の強さや明るさなどのコントラストが異なっている。
また、今回の展覧会のテーマであるINVERSIONとこの作品のポイントである蝶には繋がりがある。INVERSIONという言葉の一つには反転という意味がある。蝶の持つ意味の一つに人間の生と死があるとされ、そして復活のシンボルとしても知られている。
この色彩の違和感、そして生と死という二つの反転の生み出す空間が、まるで異世界のような不思議の国のような雰囲気を醸し出しているのではないか。
作品だけをみるのではなく、作品を通して作者と会話をしてみてほしい。
そこで得た「何か」は日常で感じる様々なマイナスな言葉や事を少しだけでも忘れさせてくれるだろう。

L.Berezenko 『いつか、どこかで、なんとなく』 長澤夏穂によるキュレーターコメント

この作品を前にして初めに見えるもの、それは2本の腕ではないだろうか。
この腕の持ち主は男女であるように見える。男女は性別的な差異、性別におけるINVERSIONであると言えるのではないか。ただ、近年性別は男女の二つでは分けられなくなっている。身体と心の性別が異なる人たちもいる。そういった面でも過去と現在、そして未来の性別の捉え方がINVERSIONであるとも言える。
ここで初めに戻ってみる。
この作品の中の2本の腕は本当に男女のものなのか。背景はただの布なのか、シーツなのか。2本の腕が通っているものは洋服の袖なのか。このポストカードの世界の中だけでも「はてな」は尽きない。
また、左の腕にかかっている影は何の影なのか。2本の腕の持ち主はどんな人なのか。ポストカードの外の世界への「はてな」も尽きない。
男女という性別の反転、過去と現在で捉え方が違うという常識の反転、実物と影という反転、
ポストカードの中と外、それぞれの世界に興味が湧いてしまう。
この作品は手と手を握り合っているスキンシップの作品であるとも言える。
この作品が、コロナ禍によってできた人と人との距離の遠さや生まれた寂しさを埋め、新たな価値観に触れるきっかけになるだろう。

Lunon

出身:千葉県
大学:女子美術大学
専攻:ファッションテキスタイル表現領域
普段は服作りやレジン工作をしている。
ビーズやレース、リボン、ビジューなどを使うのが好き。
Instagram: @lunon_lilas
Twitter: @lunon_lilas

L.Berezenko


出身:ノッティンガム
大学:ラフバラ大学
専攻:アート&デザインファンデーション
特定の制作方法にこだわる訳ではなく
多くのメディア、特にインクを使って制作している。
Instagram: @lboroberezenko

キュレーター:長澤夏穂

出身:東京都
大学:女子美術大学
専攻: 芸術文化専攻
ゼミ:芸術と法、芸術人類学、芸術表象
世界のお茶文化に興味がある。韓国の芸能が好き。
Instagram: @photo_summer_02