Panel nine - curated by YAMAMURA Lena

藩 英豪『舞う月の影』 山村玲奈によるキュレーターコメント ルイーズ・バトラー『Dive』 山村玲奈によるキュレーターコメント

藩 英豪『舞う月の影』 山村玲奈によるキュレーターコメント

青い海、青い空の上に黄金に輝く月があり、水面を照らしている。
「INVERSION」という言葉には、主に反対や反転といった意味がある。
まず、この作品は、主に青と黄色で構成されていて、青と黄色は補色の関係、つまり反転を意味することになる。
次に、この作品の主役である月の影に注目していただきたい。タイトルにもあるように、この月の影は飛んでいるのである。飛んでいるという言葉と影の形を見て取れるように、この影は鳥であると考えられる。本来、空を飛ぶはずの鳥が、この作品では海を飛んでいることに違和感を全く感じない。
「INVERSION」という言葉は、しばしば社会と絡めて革命的な逆転の意味で使われることもある。コロナ禍でたくさんの変化や日常の逆転を経験した私たちは、もう次のステージに進むことができる。
ある意味誰も取り残されることなく、世界中が同じコロナという日常の逆転を経験して、この作品の海を飛ぶ鳥のように発想を逆転させて、新たな日常、新たな当たり前を見出して、それぞれが今回の「INVERSION」というテーマと向き合って、全員で新たな1歩を踏み出すことが必要であると考える。

ルイーズ・バトラー『Dive』 山村玲奈によるキュレーターコメント

白、黒、グレーの3色、直線で構成された画面。
一見抽象的であるように見える。
しかし、よく見ると螺旋状に渦巻いた建物と思われるものが見える。
右側と左側にある黒、白の螺旋に注目していただきたい。
左側は見下ろしているように、右側は見上げているように見えないだろうか。
形自体は反転されておらず、向きを少し変えただけなのに真逆な印象に見える。
反転していないのに反転しているという複雑なINVERSIONがこの作品からは感じられる。
また、向きを少し変えるだけで印象が全く逆のものになるというのは、人の考え方にもいえることだと考える。
反対意見や問題解決に対して、大きな方針変更やまとめることが難しい場合もあるが、少し視点を変えるだけで理解できたり、解決の糸口が見つかる場合もある。
私たちがINVERSIONについて理解を深める話し合いをしたときに、違う視点という意味のINVERSIONという意見も出てきた。
ここでは、そんな違う視点という意味でのINVERSIONを、皆様のイメージと加えて感じ取っていただきたい。

 

潘 英豪(ハン エイゴウ)


出身:中国
大学:女子美術大学
専攻:大学院日本画専攻
普段は、ある風景から星や動物等自然に見えるものを見つけて日本画で描いている。

ルイーズ・バトラー


出身:ワカンダ
大学:ラフバラ大学
専攻:ヴィジュアルコミュニケーション
普段はグラフィカルな作品や水彩画を制作している。

キュレーター:山村玲奈


出身:千葉県
大学:女子美術大学
専攻:芸術文化専攻
ゼミ:西洋美術史、日本美術史
映画鑑賞とメイクアップが好き。世界各国の民族的な音楽やダンス、ファッションに興味がある。