Panel eight - curated by SUZUKI Nana

髙田 萌愛『The Inside Head』 鈴木奈那によるキュレーターコメント Darci HUNT 『岩の向こう側』 鈴木奈那によるキュレーターコメント

髙田 萌愛『The Inside Head』 鈴木奈那によるキュレーターコメント

タイルの上に大きく描かれたかぼちゃ。右下には眼球のようなもの。分厚い皮の中には様々な大きさの種、ふっくらとした実、血管が浮き出た人間の祈るような手が描かれている。連想したことは2つある。まず1つ目。かぼちゃと言えば何を思い浮かべるだろうか。ハロウィンがすぐ浮かぶのではないだろうか。ハロウィンの起源は悪霊や魔女などの人外であり、人に悪影響を及ぼすものが出てくると信じられており、それらを追い出すための伝統的な行事。そして秋の収穫を祝うものでもあるそうだ。また10月31日は日本で言うお盆でもあり、死者の霊が家族に会いに来る日でもある。生と死の境目が鈍くなり、厚い実の中に何故か人の手が入ってしまったのではないか。この祈るようにして組まれた手も宗教的な強い意味を感じる。
2つ目。この皮にも着目すると妊娠した女性の胎盤のようにも見えてくる。かぼちゃの右上にはかぼちゃと外を繋ぐような均等では無い太さの線。これはお腹の中にいる子どもと母親を繋ぐへその緒だと感じた。細やかなタッチで描かれたふっくらした実や様々な大きさの種は子どもの暗示、かぼちゃの中に入ってしまっている大きな手は子どもが安心して産まれてほしいための祈りなのではないか。

Darci HUNT 『岩の向こう側』 鈴木奈那によるキュレーターコメント

この写真は鑑賞者に簡潔に情報を与えている。大きく広がる海と、地平線を目指すような平たい岩で構成されているからだ。地平線は暗く画面中央に幅を取り、どこまでも続いていきそうに感じとれる。海は波紋が広がり、あたり一面の水を動かしている様が見ている人の心を揺さぶる。そしてこの写真は上下逆から見ても同じような、まるで鏡写しになっている。「INVERSION」とは反転、反対の意味を持つためこの写真を見た人はすぐに「INVERSIONだ」と感じるだろう。だがよく見てみると、まるっきり同じ写真を上下ともに使っているわけではない。左下の岩は小さく平べったい印象を受ける。だが左上の岩は左下の岩より大きく厚みがある。このようにそれぞれ違った岩が上下にあり、同じようで同じではない。違うようで全く違っているわけではない、というようなところが、また「INVERSION」と言えるのではないだろうか。そして綺麗な海と整地されていない複数の岩。これもまた鑑賞者に真逆の印象を与えている。動く波と動かない岩。静と動。相反するものが並ぶこの写真はまさに「INVERSION」といえる作品だろう。

髙田萌愛 (TAKADA Moe)


出身:群馬県
大学:女子美術大学
専攻:洋画
油彩で、青を基調としたタッチの荒い作品を制作しています。

Darci HUNT


専攻:
出身:
大学:ラフバラ大学

キュレーター:鈴木 菜那


出身:北海道
大学:女子美術大学
専攻: 芸術文化専攻
ゼミ:色彩学、芸術人類学
興味のある芸術、または文化:マグリット、ブリューゲル
日本の行ってみてほしい場所:ドミノピザ