Panel seven - Selected by Miku KURAMATA

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倉又未来による田倉安泰の『寄り添う』についての キュレーターコメント 

今年の本プロジェクトのテーマは『Cultivate』、日本語訳を多く持つこの言葉は一般的には「培う」「耕す」などと訳される。今回彼女の作品では、「育む」と解釈したものが、人との関係を寄り添い育む形で描かれている。

画材はペン一本。細かな線で繊細かつ緻密に根気よく描かれている。崩れる余裕もないほどびっしりと実っている木の実たちは、中心にいる二人の心が寄り添い合う事で強くエネルギーに溢れたものになるのではないかと作者は語っていた。私は、余白なく描かれているからこそ一つでも抜けてしまうと崩れてしまいそうな儚さがとても魅力的に見え、惹き込まれた。

人間関係を育むことはとても難しく、小さなことで崩れてしまうものである。彼女の作品はモノクロで描かれているにもかかわらず暗い印象はあまり無いが、それは白の使い方がとてもうまく鑑賞者の休む場所をきちんと設けることができているからではないかと思う。その余白があるからこそ描き込みがさらに際立ち、作品の存在感に磨きがかかっている。

倉又未来によるルーシー・チャンドラーの『Untitled』についてのキュレーターコメント 

私はルーシー・チャンドラーのポストカードにとても惹きつけられた。カラフルな作品の中で、モノクロでシックなかっこよさは目を惹き、画面に複数モチーフを入れることでさらに異様な魅力を感じることができた。

そしてテーマである「Cultivate」。彼女の作品には自然と結びつけられているのだが、モノクロであることから少し暗い印象を持つ人もいると思われるが、自然の中にある美しさを写し取ることが意識されている。鮮やかな色を使わずモノクロであることにも理由があるのだ。

モチーフである植物のディティールに焦点を当て、あえてモノクロにしたと彼女は教えてくれた。視覚的情報を減らすことで、彼女が意識していることに眼が行きやすくなるのではないだろうか。それを踏まえてもう一度彼女のポストカードを見てみると印象が変わるはず。黒い画面に映える白いポイントに目が行き、植物の力強さを感じることができるのではないだろうか。そのときまだ暗い印象はまだあるだろうか。彼女の作品は何回も見返すたびに新たな発見があり、いろんな見方や受け取り方を可能にしてくれる。皆さんにはどう見えて、どう感じられただろうか。

田倉安泰

東京都出身 女子美術大学洋画専攻

普段は動物が好きなので動物の作品を色鉛筆やデジタルで描いています。好きな映画の模写もよく描きます。作家名:あんたい

ルーシー・チャンドラー

バース、イギリス出身 ラフバラ大学アート&デザインファウンデーションコース、ビジュアルコミュニケーション専門所属

普段はリノリウムプリントのような物理的なプロセスと組み合わせたデジタルでの作業や、インクを使ったリノリウムプリントでの作業。3D彫刻

 キュレーター:倉又未来

東京都出身 女子美術大学芸術文化専攻 2 年 日本美術史ゼミ、芸術と法ゼミ所属

カピバラが好き