Panel one - Selected by Moeko ASAMURA

浅村萌子による尹绮昕の『Butterfly』についての キュレーターコメント
『Cultivate』とは複数の意味を包含する多義語だ。同じ『Cultivate』というテーマを与えられたとして、人によって解釈が変化する。複数あるCultivateの意味には「向上する」という共通のイメージがある。
尹绮昕のこの作品のタイトルは『butterfly』である。この作品は蝶の羽の綺麗な柄をイメージしデザインされた。尹は蝶を強さと美しさの象徴として作品内に使用した。荒地になった人の心を耕し、鮮やかな「夢」と「希望」を植えるというストーリーを青を基調としたキャンバスに抽象的に表現したものである。
この作品は『Cultivate』の耕すという部分を人々の心に繋げたものであり、蝶のもつ美しさは人々の心に芽生えた夢や希望であると思わせる。万華鏡を覗いたような作品の世界観は人の心にプラスもマイナスも含めた様々な感情が存在することを想起させる。
浅村萌子によるセリーナ・シュナウドの『Growing Rings』についてのキュレーターコメント
耕すことや栽培するなど農業的意味合いと技能や教養を身につけるといった人の内面的な意味合いを持つ言葉が『Cultivate』である。
Selina SCHNAUDTの作品『Growing Rings』は切り株をイメージして制作された。Selinaは『Cultivate』を人の成長は時間によって達成可能であると解釈し、それを表現するために『Cultivate』の農業的な意味合いを作品に使用した。成長し発展していく過程が年単位で刻まれていく木の年輪に、それを象徴させて表現している。
Selinaの美的感覚からモノクロで制作され、動きと繋がりを感じさせるために画面を縁取った作品は、6つの木の年輪それぞれが互いに共鳴し合い高めあっていくようにも見える。作者は意図していないかもしれないが、内面の成長には時間と他者の存在が必要である。そう感じさせてくれるこの作品は、コロナ禍で失いかけていた自分に必要なものを思い出させてくれる。
尹绮昕(イン キキン)
中国出身 女子美術大学院メディア研究領域所属普段は子ども向けのイラストを制作
Instagram: @yin_117art
セリーナ・シュナウド
タイ出身 ラフバラ大学アート&デザインファンデーション、ヴィジュアルコミュニケーション所属
普段は写真と陶芸を用いた作品を制作している。
キュレーター:浅村萌子
神奈川県出身 女子美術大学芸術文化専攻2年 日本美術史ゼミ、芸術と法ゼミ所属
歌舞伎鑑賞と着物が好き。地元でお囃子をしている。